白い花 (短編小説)

白い花

私は、白い花を手向けた
疲れきって、うつむいた、二人の私に……

私は、過ちを犯した
どうしようもない過ち……

自分のことなら、まだいい
永遠に取り返しのつかない、大事な、命…命を失った

あのとき、私が間違った信念を、優先したから…

過ちを犯した自分を
許す必要などない
許す理由などない
被害を被らせた相手に、私を許してほしいなどと思わない
むしろ、私を殺してくれ…

そんな苦しみの中で、何か答えになるものはないかと、ネットで探していた

聖母マリアへ行き着いた…
私は初めて、許しを乞うた
許してほしいなど、それまで思ったことはなかった
むしろ、罰せられるべき存在としか思っていなかった

その後あるとき、
「(相手を)ただの被害者に留めてはならない」と聞いた

「(相手は、私に)気づきを与えるために、
愛ゆえに
その役をかってくれたのだ」とも…

そんなもの要らない
私の気づきなんかのために、
自分を犠牲にする必要なんてない
最も尊い命を、犠牲にする必要なんてない

でも…命をかけて私に教えてくれたのは、
あのとき優先させた、疑いようのない私の信念が、要らないものだということだった

信念は、私の体の一部のように、当たり前に存在していた
当たり前だった

けどそれが、間違ったものであることを、命をとして、教えてくれた…

私がいつまでも、それに気づかなかったから…

未熟だったから…

それが許される理由になるだろうか
なるはずがない

でも…
許されるはずがない理由を並べて、
許されるはずがないことを厳然とさせている自分に気づいた…

「(かつての自分の)未熟」も、呑み込むしかない…

それでも、私は、私を許せなかった…

私は、私を許せず、殺すことにした…
心の中で…
万死に値する、私を…

「心の中」。その時点で、いくじがないとも思う

許せない思いをぶつける私と、その思いのたけをその通りだと思って受ける私

そうして
私は何人殺しただろうか、何人殺されただろうか
いろんな殺し方をした、いろんな殺され方をした
殺すのも疲れる、殺されるのは痛い苦しい

どれだけ時間をかけただろうか

闇が続いているだけだった…

そのうち…

思いをぶつけ続けている私は、疲れ果てて…
もう一人の私をまた殺そうとする手が止まった

許したというわけではない

もう一人の私も、許されたとは思っていない、変わらず、許してほしいなどと思っていない

何も生まれない世界

何を生みたかった…?

犠牲など出さずに、ただ、安らかな愛だけがあればそれでよかった
最初から、それだけがあれば、それでよかった

今、自分が大事だと思うものを、大事にすればいい

ただそれだけ…

今、大事に握りしめているのは、過去からの信念などではないかどうか、それをその都度、見定める必要がある…

画像:https://unsplash.com/ja/@carolinachadwick
   有り難うございます。

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